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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.84】「アーニャは、きっと来る」

2020.11.19


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
戦争映画と聞いてとっさに頭に浮かぶのは、激しい銃撃戦? ましてやナチスドイツ、ユダヤ人迫害がテーマと聞けば、過酷な収容所での生活など、目を背けたくなる光景を想像してしまいがちですよね。
一方、血が流れない戦争映画もあって、逆に戦争の恐ろしさや虚しさを強烈に印象づけるものもあります。児童文学を映画化したという今回の作品もそう。偶然出会ったユダヤ人を、フランスからスペインへと逃がす手伝いをすることになり、色々な大人と関わる中で成長する少年のストーリー。いまだ差別がはびこる現代社会への痛烈なメッセージのようにも感じます。


「ユダヤ人を逃げる手助けをした」といえば、第二次大戦中、在リトアニア駐在大使だった杉原千畝を思い出します。映画化もされていましたね。役人・民間人問わず、そういった史実はじつはたくさんあったようです。杉原のように使命感に駆り立てられて行動を取った人もいれば、この作品の主人公ジョー(ノア・シュナップ)のように、あまり状況を理解しないままに手助けしていたケースもあったのかもしれません。
1942年。アルプスの少女ハイジが住んでいそうなフランス・ピレネー山脈のふもとの小さな村にまで、戦争の足音は近づいていました。ナチスの手から命からがら逃げてきたベンジャミン(フレデリック・シュミット)と偶然出会った羊飼いの少年ジョーは、やがて彼を、彼らを助けることに。ベンジャミンは義理の母オルカーダ(アンジェリカ・ヒューストン)の家に身を隠しながら、逃亡する際に生き別れた娘のアーニャを待ち続けているのです。彼らはユダヤ人の子どもたちをかくまいながら、スペインへ脱出する時期を図っているのですが……。


一番印象に残ったのは、ナチス軍の伍長であるホフマンとジョーが鷲を見に山へ行くシーンでした。穏やかで良識的なホフマンに通じ合うものを感じ、敵とは知りつつ心を寄せるジョー。「自分はここで何をしているのか、いつも自問している」みたいなことを伍長が言っていました。美しい自然と戦争とのギャップを一番感じるシーンで、人間どうしが争う不条理や虚しさが、銃弾が飛び交う戦闘シーンとは違う形で伝わってくるんです。
途中でジョーのお父さんが出てくるんですけど、ドイツの収容所から帰国したばかりだから、とっても荒んでいる。そういう父親をホフマンと比べて、カッコ悪いなあと思っちゃうジョー。そういう描写もリアルだなあ……。敵だから憎む、味方だからすべて受け入れる、そう単純にはいかないんですよね、人の気持ちって。


ユダヤ人のベンジャミンに「なぜユダヤ人は嫌われるの?」と純粋に尋ねるジョー。杉原千畝と違ってユダヤ人の何たるかもほぼ分かっていない少年は、どうして危険を冒して彼らを助けようとしたのでしょうか。その答えは映画には出てきません。
悲しいことに、特定の民族や宗教を理由に人を差別する例は、今も枚挙にいとまがないほどで、日本に逃げてくる人もたくさんいます。ジョーが取った行動は、「困っている人を助ける」ただそれだけのことなのかもしれません。ラストシーンを見ながらそんな風に感じました。


「アーニャは、きっと来る」 11月27日(金)より、新宿ピカデリー他全国ロードショー
配給:ショウゲート
©Goldfinch Family Films Limited 2019


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和 

次回11/27(金)は「ノッティングヒルの洋菓子店」です。お楽しみに!

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