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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.53】「最高の花婿 アンコール」

2020.03.26


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
フレンチにイタリアンに、ラーメン餃子、タイ料理etc.日本て色々な国のものが食べられますよね。タピオカとかバスクチーズケーキとか、「上陸スイーツ」も大好きだし。
とはいえ、色々な国の人がいるかというとそうでもなく、だいたい日本の人がその味を再現していることが今までは多かった気がします。
ここ数年、留学生や移民など日本在住の外国人が増えているので、現地の人が作る味をいただける機会が増えるかもしれません。
意外かもしれませんが、統計によると2018年に日本は世界で4番目に(OECD諸国の中で)外国人住民を受け入れているらしいです。いよいよ日本も多文化社会に……?

一方、長く多文化国家として知られる国の一つがフランス。外国で生まれた人の割合は人口の10%以上になるそう。
2016年に日本でも公開されたフランス映画『最高の花婿』は、敬虔なカトリック一家の4姉妹が全員外国人と結婚してしまうというストーリーでした。「移民大国」フランスで未だに続く差別や偏見の問題を、面白おかしく、でも真剣に扱った内容が世界中で評判を呼び、日本でも大ヒット。
『最高の花婿 アンコール』はその続編。 前作で丸くおさまったと思われた一家にまたしても問題が起こって……。
笑って泣いて、色々と考えさせられて、前作に続き最後はとても温かい気持ちになれる映画です。



前作『最高の花婿』はフランスで5人に1人が見たという大ヒット作。ちなみにフランスでは「人種」という言葉を憲法から削除したそうで、フランス人がどれだけこの問題に敏感であるかが分かりますよね。

舞台はフランスの南西部に位置するロワール地方。敬虔なカトリックであるヴェルヌイユ家の4人姉妹のうち、長女~3女はそれぞれアラブ系、ユダヤ人、中国系の相手と結婚し、4女だけはどうか白人のフランス人を選んでほしいという両親の願いかなわず、彼女が選んだ相手はコートジボワール出身の黒人。両親は猛反対するも最後はお互いが歩み寄り、なんとか宗教や文化の違いを乗り越えた、というのが前作でした。
しかし4人の婿は移民に厳しいフランスでの生活にやはり息苦しさを覚えていたようで……4家族とも転勤先や祖国に引っ越すと宣言するのです。


彼らが日々直面する「異文化ハラスメント」。例えば長女の婿ラシッド(メディ・サドゥアン)はアルジェリア出身のアラブ系ゆえ、コートを着ていると「Kamikaz(=自爆テロリスト)」だと思われてしまう。3女の婿シャオ(フレデリック・チョウ)は、中国系は狙われやすいとATMでお金をおろすだけでもビクビク。俳優である4女の婿シャルル(ヌーム・ディアワラ)は、黒人は重要な役をもらえないと嘆きます。次女の婿ダヴィド(アリ・アビタン)はユダヤ人ですが、彼の悩みはちょっと忘れてしまいました。
ただ、最近ヨーロッパでは反ユダヤ主義が台頭しているとニュースでよく聞くので、日々ストレスはありそうです。

婿たちはともかく(?)、可愛い娘や孫たちと会えなくなるなんて耐えられないと、両親が取ったのは「婿たちにフランスを好きになってもらおう作戦」。2人が誇るロワール地方を一緒に巡り、美しい景色や人々の歓待(仕込みあり)で4人の心変わりを期待するのですが……。


4人姉妹のお父さんクロード(クリスチャン・クラヴィエ)がとってもコンサバで、電車のストライキがあると「これぞフランス」と安心するほどのフランス絶対主義者で、なんだか憎めない人なのです。
前作に引き続き差別的発言がひどく、婿たちのことを多国籍軍と言ったり、彼らの祖国を旅行して帰ってきたときも、それぞれの国の悪口ばかり。その言動をたしなめるのが、寛容な妻のマリー(シャンタル・ロビー)です。
発言だけ聞いていると、このお父さんどうしようもないなあと思っちゃうんですけど、実は彼の偏見に満ちた態度こそが、異文化の壁を乗り越えるきっかけになっているのかなとも感じるのです。
というのも、彼が思っていることは多くの「生粋の」フランス人が感じていることで、でも普段は表には出さず、だから差別や偏見は解消されずに続いてしまう……。
クロードは本当に悪気なく思ったことを言ってしまうのですが、その結果ケンカにもなるけれど、言いたいことを言い合えるんじゃないかと。

ちなみに4人の婿はこの義父に対する戦いで結束しつつも、彼らの中にもお互いの文化への偏見があって、そこがリアルで面白いんです。
アラブ系のラシッドに対して「クスクス野郎!」とシャオが揶揄したり、そのシャオは「中国人はすぐゴマをする」と他の3人に影で笑われていたり。
「いけないけど、そう思っちゃう」のオンパレードで、思わず笑ってしまうのです。
監督いわく、観客たちは「アラブ系の人はアラブ系をイジる場面で、中国系の人は中国系をイジる場面で笑う」んだそうです。


今作のもう1つの見どころが、4女の婿シャルルの妹、ヴィヴィアン(タチアナ・ロホ)の結婚話。おめでたいのですが、相手は男性でなく女性だったため、クロードに負けず劣らず保守的な父親アンドレ(パスカル・ンゾンジ)を説得できるのか??
このエピソードは、差別や偏見は色んなところにあるという監督のメッセージなのかな、と思いました。

そういえば、この前見た映画でこんなシーンがありました。パキスタン人の青年が留学先のニューヨークでアメリカ人の女性と出会い、彼女は「パキスタン? それどこ?」と、ちょっと小馬鹿にした態度を取るのですが、その会話がきっかけで2人は親密な関係に発展するんです。この女性の言い方はよくないかもしれませんが、結果的には違いを乗り越えるきっかけになっているんですよね。

前作の公開時には「んーフランスって大変だな」と思えていた部分もありますが、2019年には在留外国人の人数が過去最高となった日本でも、この話題はもはや他人事ではありません。もちろんこの映画のようにすんなりとはいきませんが、ヴェルヌイユ家を見習って(?)、違いを楽しく受け入れられる社会を目指していきたいですね。

「最高の花婿 アンコール」  3月27日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA ほかにて全国順次公開
配給:セテラ・インターナショナル
©2018 LES FILMS DU PREMIER - LES FILMS DU 24 - TF1 FILMS PRODUCTION


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和 

次回4/3(金)は「在りし日の歌」です。お楽しみに!

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