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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.48】「レ・ミゼラブル」

2020.02.20


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
先日はバレンタインでしたね~。みなさんチョコはどんな味が好みですか。ブラック、ホワイト、今年はピンク色のルビーチョコが流行してますね。
マツコはちょっぴりビターなチョコが好きで、よく買うのはカカオ70%くらいのもの。映画もチョコみたいに、スイートな話もあればビターな内容もあって、好みが分かれるところ。
今回紹介する『レ・ミゼラブル』は、実話をもとに、フランス・パリ郊外の貧困地域における住民と警官の対立を描いたもの。
チョコで言えば、さしずめエクストラビターかしら……カカオ80%以上! かなり苦いけど、それでもおすすめするのは、これが今フランスで、そして世界のいたるところで起こっている現実だから。
移民・難民、貧困、子供の犯罪……etc. いよいよ日本も他人事ではいられない問題を扱った今作。今年のアカデミー賞国際長編映画賞と昨年のカンヌ国際映画祭パルムドールを、ともに『パラサイト 半地下の家族』と最後まで争った傑作です。


冒頭がとても印象的でした。溢れる人、人、人、そして地響きのように唸る大衆の声。
一昨年から続いている「黄色いベスト運動=燃料値上げに対する大規模デモ」かなと思ったら、2018年のサッカーワールドカップの優勝パレードでした。20年ぶりに優勝したんですよね、フランス。
このシーンが持つ意味は大きくて、老若男女、肌の色が違う人々が同じ歓びを分かち合う姿は、さすが「diversité=多様性」を重んじるフランス! と感じるのですが、それはあくまでこういう大きな祭典に限られたものということが、その後の展開で明らかになってしまうんですね。

パリ郊外のモンフェルメイユという街で、犯罪防止班の一員として活動することになった新人警官のステファン(ダミアン・ボナール)。チームを組むのはベテランでかなり差別主義者のクリス(アレクシス・マネンティ)と、若手で気の短いグワダ(ジェブリル・ゾンガ)。
ステファンはフランス北部の田舎からやって来たので、この地域の犯罪の多さ~しかも多くは子どもとも言える年齢の若者たちによるもの~に早くも驚きを隠せません。
それだけではなく、警官としても絶えず住民と争っているわけにもいかず、ある種の「協定」を結んで妥協せざるを得ない状況。そんな中、警察側が致命的な失態を犯してしまい、住民たちの怒りは最高潮に……。


僕たちが思い描いているような「白人のフランス人」がほとんど出てきません。ステファンとクリスと、警察署長(ジャンヌ・バリバール)くらい。
この郊外の貧民地域には「白人と非白人」というシンプルな構図が成り立たないくらいの、実に30カ国(!)に及ぶ多国籍の住民が暮らしているとか。フランスの元植民地である北アフリカ諸国にはじまり、アラブ系住民、そしてロマの人たちも出てきます。この中には、親の出自が違っても今はれっきとしたフランス人もいれば、違法滞在している人もいるのでしょう。

このステファンという人物は映画を見ている僕たち自身なのかもしれないなと思いました。
新人として客観的にこの地域の状況を目の当たりにし、「明らかに異常である」と感じるも、何か改善のための行動を取れるのかというと……。
 


この映画は失業と貧困に苦しむ住民にも、彼らに手を焼く警官たちにも肩入れはしていません。ニュートラルな視点で描かれているからこそ、簡単に解決できない問題にうーんうーんと行き詰まってしまう。
でもそれでいいのかもしれません。黄色いベスト運動も、パリの素敵なスイーツやファッションも、そしてこの地域のような民族対立や貧困も、どれもがフランスが持つ側面のひとつ。
こういう現実があると知ることがまずは大事なのかもしれません。
と言いつつも、この映画を見たマクロン大統領が「この地域の生活条件を改善するために……」と呼びかけたそうなのですが、映画を見なかったら何もしなかったのか?と、少しモヤモヤしちゃいました。

今年はオリンピックイヤー。スポーツの祭典では皆で一緒に盛り上がるけど、日常生活で「共生」しきれていないのは、日本も同じように思います。
「一億総活躍」という華やかな理想ばかり先行する今こそ、見たい一本です。



「レ・ミゼラブル」  2月28日(金)新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
©SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回2/28(金)は「栄光のマイヨジョーヌ」です。お楽しみに!

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