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オレンジページ☆デイリー

2019.8.30

【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.22】「おしえて! ドクター・ルース」

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
おすすめの映画教えてとよく聞かれるのですが、これがなかなか答えるのが難しい。
自分が好きでも他の人にとって面白いかどうか分からないし、性別や年齢でおすすめを選ぶのもなんだか違う気がするし……。
このコラム見て!と言いたくなっちゃいます(笑)。

そんな中、「こういう人に見てほしい」ではなく、「どんな人にも見てほしい」作品に出会いました。
普段ドキュメンタリーはあまり見ないのですが、ドクター・ルースの存在を教えてくれたこの映画に感謝!
『おしえて! ドクター・ルース』という作品を手短に説明するなら、「90歳の現役セックス・セラピスト」というキーワードが妥当でしょう。
だけど、この人の魅力はこんな肩書だけでは語り尽くせない! チャーミングで常にポジティブに見える彼女の壮絶な過去を知ると、今まで自分が持っていた常識がすこーんと抜け落ちて、前向きに生きるヒントをもらえる……そんな映画です。


性に関する話をするとき、つい茶化してしまうことはありませんか?
普通にふざけているときもあれば、本当は真剣なんだけど、シリアスさを前面に出したくないときにも使いますね。
セックス・セラピストのドクター・ルースこと、カローラ・ルース・シーゲルは性の話題に(笑)をつけません。
彼女にとって、性に関する事柄は誰にとっても関係のある真剣な話題。かつセックスとは明るく楽しいもの、こっそりニヤニヤと嘲ったり卑下したりするようなものではないからです。

彼女を一躍有名にしたのは、1981年に始まったニューヨークのローカルラジオ番組『セクシャリー・スピーキング』。
視聴者の性の悩みにルースが答える形で進んでいくこの番組は、日曜の深夜放送にも関わらず大人気で、ドクター・ルースの名はアメリカ中に広まったそう。
皆のお悩みは様々で、性器のサイズのこと、大人のおもちゃのことなど、なんでもOK! それまでのアメリカ社会で、語りたいけど語られてこなかったトピックの受け口となりました。
この手の番組、例えばタレントさんがパーソナリティでも成立しそう。けれども、心理学をきちんと学んだ、それも性を大っぴらに語るのをタブーとされてきた女性のドクターが答えるからこそいいんでしょうね。


ルースは単に性のお悩みに答える楽しいおばちゃんなだけではなく
(それだけでも素晴らしいんですが)、エイズや中絶など性に関する様々な社会問題に取り組んできました。
特に中絶は、貧富の差によって安全な手術が受けられるかどうかが決まる、ルースの言葉を借りると「女性を分断する」問題。
だからこそ「妊娠中絶は合法でなければならない」と主張し続けています。
そんな中、例え強姦による妊娠でも中絶を認めない、という法案が今年アラバマ州で可決されたそう。今年91歳になったセラピストの活動は、まだまだ衰える余地はなさそうです。


いわゆるフェミニストとも彼女は違う。
特定のカテゴリーに限定せず、誰に対してもオープンマインドなその態度はどこからやって来るのでしょう?
中絶と同様、彼女が力を入れて取り組んできたのがHIV感染の問題。
80年代にエイズが猛威をふるい始めた際、社会の誤解による同性愛者へのバッシングの動きに、彼女は強い反発を覚えたといいます。
「ノーマル」という言葉を嫌い、社会的に弱い立場に置かれた人に寄り添わずにいられないルース。それは、当時ではまだ珍しかったシングルマザーとして娘を育て、自らも社会の弱者だった経験が影響しています。
さらに……「自分も祖国を追われた身として他人事ではない」。

ルースはユダヤ系のドイツ人。第二次世界大戦中のホロコーストで両親と祖母を失い、いくつもの逆境を乗り越えてニューヨークに渡ったのです。

「辛い経験をした人ほど、人に優しくできる。」
嘘ではないですが、みんながみんなそうではないですね。その経験がマイナスに作用して人を陥れようとする人もいれば、気力を失ってふさぎ込んでしまう人もいる。
孤児となったカローラ・ルース・シーゲルは、こんな小さな体のどこから?と思わせるバイタリティで、ソルボンヌ、コロンビア、コーネル大学と名門校で学業を修めます。
「知識は誰にも奪えない」という亡きお父さんの言葉が彼女を勉学への道へと駆り立てたのかもしれません。

彼女がどれほどの苦労を重ねてきたか、説明されたところで僕たちには想像もつきません。
90歳を超えてもなお仕事を詰め込む彼女の姿からは、その明るいキャラクターとは別に、絶えず自分を律する緊張感が伝わってくるんです。
10歳で疎開し、戦後にイスラエル兵の軍事活動を守るスナイパーとなり、紆余曲折を経て現在の職業にたどり着いた彼女の歴史を知ると、ただただ圧倒され、人生におけるあらゆる出来事はすべてつながっているんだなと思いました。


過去の回想シーンにはある仕掛けが使われていて、このドキュメンタリー映画にややフィクション的な雰囲気を与えています。
マツコ同様、ドキュメンタリーがそんなに好きではない人も楽しめるはず。

アメリカにおける性の分野で多大な貢献をし、人々の悩みに答え続けてきたルース。
彼女自身が二度の離婚を経験し、三度目の結婚で最高のパートナーに出会っています。
愛情を感じた相手にまっしぐらに突き進み、違うなと思ったら見切りも早い。この動物的な直感もルースの魅力だと思う! 

このドキュメンタリーの中にハッとさせられるルースの言葉がいくつもあって、とてもここには書ききれません。
ぜひ映画館へ足を運んで、ドクター・ルースの講義を受けてみてください。
この人にしか教われない人生のヒントを必ず学べるはずです。


「おしえて! ドクター・ルース」 8月30日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ロングライド

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回9/6金)は「ヒンディ・ミディアム」です。お楽しみに!

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