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オレンジページ☆デイリー

2019.8.2

【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.18】「よこがお」


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
この間、映画好きの友人と話をしているときに、「マツコは暗い映画好きだよね~」と言われました。なぬ。確かに超ハッピーな作品やアクション系はあまり見ないけど、暗い映画と言われると少し複雑な気分(笑)。
ストーリーに深みがあって、色々考えを巡らせたくなる映画が好き、ということにしておきましょう。

と言いつつ、今回紹介する邦画『よこがお』も暗い映画と言われてしまうかもしれない……。
いや、暗いというよりこの映画は「不穏」なのです。脚本も自ら手掛ける深田晃司監督は、これまでにも『ほとりの朔子』『淵に立つ』など不穏な空気が漂う作品をいくつも作っています。
この穏やかならぬ雰囲気にゾクっとしながらも、いつも魅了されてしまうのです。


訪問看護師として働く市子(筒井真理子)は、丁寧かつ人間味のある看護で、患者からもその家族からも信頼を得ています。
この筒井真理子さん、良い人オーラが凄すぎるだけでなく、薄幸感も兼ね備えていてお見事(ほめています)。絶対に何か起こりそうな不穏さを既に感じます。
訪問先の1つである大石家とは特に仲が良く、介護福祉士を目指す長女の基子(市川実日子)の勉強を見てやり、次女のサキ(小川未祐)の受験勉強(かな?)にも付き合っていて関係は良好。
市子さん(映画を見ているとなんだか「さん」付けしたくなるのです)、仕事だけじゃなくて恋愛面も充実していますよ。
同じく大石家に医師として通う戸塚氏(吹越 満)とお付き合いしていて、彼の連れ子とも相性はよく、近々結婚する予定なのです。
嗚呼でも、神様がこの薄幸オーラを見逃すわけがありません。


ある日、大石家の次女・サキが、何者かに誘拐監禁されてしまうのです。数日後、サキは無事に保護されるのですが、犯人はなんと市子さんの親戚だったことが判明。同じ苗字ではないので、大石家にも職場にもすぐにバレることはありませんが、真面目な市子さんは「やっぱり話さなければ」と意思を固めます。が、それを止めるのが大石家の長女・基子。妹が被害に遭ったのに、その犯人の親戚をかばうか?とも思うのですが、基子の市子さんに対する感情は、「勉強を教えてくれる年上の優しい女性」以上のものがあるように感じます。
迷いながらも基子の言うとおり、そのまま大石家のおばあちゃんの介護を続ける市子ですが、もちろん長く隠し通せるわけがありません。
誰か裏切者がいて、週刊誌に情報を売ったのです。


タイトルの「よこがお」は、もう片側が見えないことから、人間が持つ「二面性」「多面性」を意味しているそうです。
味方だと思っていた人が急に裏切ったり、穏やかに見えていた人が急に残忍さを発揮したり……。
例えば殺人事件が起こったとき、「あんな優しそうな人が」という意見と、「そういえば中学生のときから少し変わっていました」というような、両方の意見が出てくると思います。
その人が持つどの一面を知っていたか、もしくはどんなイメージでその人を見ていたかによって、きっと印象は変わりますもんね。
とはいえ、「まさか自分があんなことをするなんて」と本人でさえも驚いているというケースもままあるので、人間て不思議ですよね。
この映画で言うと、事件を起こした犯人はどういうキャラクターなのかあまり描かれておらず、犯行が「意外」なのか「やっぱり」なのかはやや不明。一方、市子を裏切った人物は、自分でもなぜそうしてしまったのか分からず、複雑な感情を持て余しています。事件そのものではなく、それにともなう人間関係における「小さな悪意」こそが、この監督の作品における不穏さの正体かもしれません。


週刊誌に晒され、戸塚氏と予定していた新居探し&引っ越しも延期に……。2人の関係もこのままフェードアウトなのかな(泣)と思いきや、「引っ越し延期だね。君のせいだよ……君が収納にこだわるから」と戸塚さん。市子さんは悪くないということを、直接的ではなく少し冗談めかして伝える神発言(ちょっと少女漫画っぽい)。 市子さん、男を見る目ある!(マツコは吹越 満さんファンなので、この場面でテンション上がりました笑)

この映画は、加害者側、それも直接の加害者ではなく関係者の視点で描くことで、見ている僕たちを迷わせます。
平凡な日常を失っていく市子さんの姿に心が痛むし、とはいえ一番辛いのはやはり被害者なわけだし……報道のあるべき姿とは……etc. 
今作に限らず、深田監督は忘れられがちな人、立場の弱い人、もう少しダイレクトに言うと、差別の対象になるような人たちを意識的に映画に登場させている気がします。それも、多くはさりげない形で。
だから、「そうか、こういう見方もあったか」と、ハッとさせられることが多いんです。

自分を裏切った人物への復讐を誓う市子さん。物語は意外な方向へ進んでいきます。
どの人物も身近にいそうな人たちばかりで、最後まで目が離せませんでした。


「よこがお」  角川シネマ有楽町、テアトル新宿他全国公開中
配給:KADOKAWA
ⓒ2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回8/9(金)は「風をつかまえた少年」です。お楽しみに!

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