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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.16】「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」

2019.07.18

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
お料理の世界で花形といえば、やっぱりフランス料理。フレンチと聞くとちょっとハードルが高いですが、フランス人も普段はもっと素朴なものを食べているんですよね。外国人がイメージする和食を毎日食べている日本人が少ないように。
映画にも同じようなことが言えるような。フランス映画と聞くと、「オシャレ」「なんだか小難しい」と思う人も多いかもしれません。実際そういう作品も多いですが、日本に配給されることが少ないだけでコメディ映画もたくさんあるんです。

「フランス映画はちょっと」そんな人にこそオススメしたいのが、今回紹介する『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』。
中年のさえないおじさんたちが、シンクロで世界一を目指す!? 
オシャレなフランス映画にあるまじき設定ですよね(笑)。


日本の映画「ウォーターボーイズ」を見たことがある方は、シンプルにそのフランス版を想像するかもしれません。確かに、「男子がシンクロなんて」という世間の目と闘いながら競技に打ち込む点は同様ですが、これから体が作られる男子高校生と、重力の影響に逆らいきれない中年の肉体では、同じ競技でもまったく違う印象に。
体つきだけでなく、それぞれのメンバーが抱える問題も高校生とは雲泥の差で……。
人生に何かしらの問題を抱えるおじさんたちのドタバタ劇は、一見コミカルなようで、やはりそこはフランス映画、こちらに問いかけてくる深みがきちんとありました。


この映画、大物俳優がたくさん出ていて主役がいるようないないような感じ。うつ病で絶賛ニート中のベルトラン(マチュー・アマルリック)がプールに行った際、「男子シンクロ※チームのメンバー募集」の張り紙を見てチームに加入するところから物語が始まるので、彼が主役なのでしょう。
このシンクロチームのメンバーが全員おじさん、しかもみんなキャラ濃すぎ! ロラン(ギョーム・カネ)は妻と離婚、施設に入っている母親との関係もよろしくない、すぐにブチ切れる短気おじさん。社長だった頃の自分を忘れられない、中二病おじさんはマルキュス(ブノワ・ポールヴールド)。ミュージシャンを目指しながらも成功には程遠く、娘からも冷たくあしらわれているシモン(ジャン=ユーグ・アングラード)は、さしずめ夢見る永遠の少年おじさん。さらに、今まで恋愛経験のない(っぽい)ピュアおじさんティエリー(フィリップ・カトリーヌ)他数名、まさにさえないおじさんのデパート状態。

面白おかしく書いちゃいましたが、マツコ自身、短気だし夢見がちだし……この人たちを悪く言いたくない(笑)。

それにしても、シンクロってそんなに簡単にできるの? なんで若い人いないの? と疑問に思いましたが、このお話は実話なんですって。元ネタはフランスではなく、実在するスウェーデンの男子シンクロチーム。このチームの入部条件が、「40歳以上であること」「体を鍛えすぎていないこと」。主要な国際大会には出場せず、「全力で楽しむこと」をモットーにしているらしいです。へぇ~!

※2017年に、国際水泳連盟が種目名を「シンクロナイズド・スイミング」から、「アーティスティックスイミング」に変更すると発表。


うつ病で思い出しましたが、先日紹介したフランス映画 「パパは奮闘中!」の主人公の奥さんも、そういえば精神科医にかかっていたな。
調べてみると、フランスでは年間約300万人がうつ病にかかっているそう。人口が6700万人くらいだから、けっこうな割合ですよね。
ベルトランがなぜうつ病にかかったのかは分かりません。息子からは小馬鹿にされているようですが、中学生くらいの年頃なら別に普通かな? 幼い娘とは仲良くプールに行っているし、何より奥さんが素晴らしい。口調は厳しいですが、彼をしっかり支えている印象です。病気だけど家族には恵まれていて……と思ったら、いた! ストレスの元凶になりそうな人たちが。奥さんの姉夫婦が、心配している風を装って上から目線でお説教してくるのです。男性のシンクロも馬鹿にするし……。
マツコの周りにもいます。こういう、「優しいフリしてマウンティングしたい」人たち。勝手に同じフィールドに入れて比較しないでほしいですよね。映画の終わりまでに、絶対この人たちにギャフンと言わせてほしい(笑)。下に見られていると分かっていながらも、ベルトランは義兄が経営する家具屋で雇ってもらうことになります。彼の方には競う気持ちが全くないからこそ、こだわりなく申し出を受け入れたのでしょうね。
見ているうちに同じように思う人もいるかもしれませんが、周りの人たちが彼らを「さえない」と評しているだけで、このおじさん達は自分自身を特別ネガティブには見ていない気がします。


さてこの映画、フランスで実に400万人を動員したとか。名立たる俳優たちの競演や、「おじさんたちのシンクロ」という設定から容易に想像されるコメディ要素、これらももちろん魅力の1つではあるのですが、シンクロという競技そのものが物語に命を吹き込んでいます。
ご存じの通り、男子のシンクロはとってもマイナーな競技。世の中に広く浸透していないものに挑戦する、まずそのハードルによって団結が生まれる。ベルトランが入部した途端に皆と仲良くなる展開にやや「?」でしたが、見ているうちに、このチームに流れる独特な寛容さに心地よさを感じます。
さらに、ぴったりと息の合った演技をするためには、さらなる団結が必要とされるわけで。年齢だけは「おじさん」にくくられるという共通点があるものの、まったく違う人生を生きてきた彼らが、互いを受け入れて共有する展開が心地よいんですよね~。 「みんなで力を合わせるっていいな」と、ピュアな気持ちで思えてくるのです。

想像ですが、昨年からの「黄色いベスト運動」で社会の中に亀裂が生まれているフランスだからこそ、こういうチームワークの良さをシンプルに伝える映画がヒットしたのかな?なんて思いました。


モチーフとなったスウェーデンのチームとは違い、彼らは世界選手権への出場を決心し、猛練習に励みます。
世界選手権てそんな簡単に出られるの???と思ったものの、外国の映画だからここは突っ込まないことにしよう……。
いろいろな国のチームが出場するのですが、「ポルトガルには勝てる」「なんで?」「だってポルトガルだぞ?」というやり取りや、「フランスは嫌われてるから点数が低いはずだ」という発言があったり、フランス人の自国・他国に対してのイメージが少し分かって面白いです。
ちなみに日本チームも出ていて、めっちゃ点数高くて嬉しくなる(笑)。
肝心のフランスチームの結果が気になるところですが、それ自体はあまり重要ではない気がします。
コメディ要素だけでなくきちんとしたメッセージがある、でも難解過ぎない。「フランス映画は苦手」という人もきっと楽しめる一本です。

ちなみに、同じくスウェーデンの男子シンクロチームをモデルとした、イギリス版のシンクロおじさん映画が9月に公開決定しています。
どんだけ人気あるのこのモチーフ!(笑)。イギリス版ではどんなおじさんが登場するのでしょう?


「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中
配給:キノフィルムズ/木下グループ
ⓒ2018 -Tresor Films-Chi-Fou-Mi Productions-Cool industrie-Studiocanal-Tf1 Films Production-Artemis Productions

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回7/26(金)は「存在のない子供たち」です。お楽しみに!

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