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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.15】「サマーフィーリング」

2019.07.11

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
料理の仕事をしていると、「このレシピずるいなぁ」と思うことがあります。例えば、から揚げにたっぷりのタルタルソースをかけるとか、ポテサラにクリームチーズも入れちゃうとか。
何がずるいのか?と考えるに、美味しいもの×美味しいもの=美味しくないわけないだろ! というところだと思います。

映画でも「ずるい」はあると思うんです。題材、ロケーション、俳優etc.の掛け合わせ。
今回紹介する『サマーフィーリング』も、事前情報だけで「うわっずるい、これは見なきゃ」と思う設定の作品でした。
先日紹介した『メモリーズ・オブ・サマー』といい、マツコの持論ではタイトルにサマーが入る映画に外れなし!


ベルリン、パリ、ニューヨーク。3つの都市で過ごす、3つの夏。欧米の素敵な都市だけを選んでいるのもずるいし、ニューヨークは知らないけどヨーロッパの夏なんて響きだけで良さそう。
しかも、恋人を突然失った青年が美しい景色の中で自分を取り戻すストーリーだなんて……。
これ、ずるくないですか?(笑)。

よく「自然の力はすごい」と言いますが、街もまた違う意味ですごい力を持っていると思うんですね。
気候、歴史、そしてそこに住む人たちが作り出すパワー。
喜びも悲しみも、その街ならではの色合いと共に人々の心に刻まれる、この映画を見てそんな風に感じました。


ベルリン。夏真っ盛りのある日、ロレンス(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)の恋人サシャ(ステファニー・デール)は突然この世を去ります。
ロレンスがサシャの職場に荷物を取りに行く場面があり、そうか、こういうときは誰かが職場に荷物を取りに行くんだなと、妙に印象に残りました。

翻訳業をしながら作家としても活動しているロレンス。サシャがいなくなった部屋でふと手に取った紙に、彼女の文字を見つけます。
それは生前、彼の新しい小説のタイトル案を、サシャが考えてメモしたもの。
誰かの不在が、その人が残したものによって急に顕在化すること、ありませんか?
初めてロレンスがサシャの死を認識した瞬間かもしれません。


サシャの死は、妹のゾエ(ジュディット・シュムラ)とロレンスを引き合わせることに。
マツコの印象ではそんなに似ている姉妹ではないのですが、ロレンスにとっては「耳の形が一緒」らしく、大切な人を思い出してしまう存在です。
1年後、パリで働くゾエに会いに行くロレンス。幼い息子を持つゾエは、現在夫と別居中。「あれ、まさかこの2人くっつくの?」と下世話なマツコは勘ぐってしまいます(笑)。

ゾエの目線でストーリーが進むパリ編。ある朝目覚めたゾエが、改めて姉の死を実感する場面があるのですが、ベルリン編でもロレンスが同じようにサシャの不在に気が付くシーンがありましたよね。
悲しみ、孤独、寂しさなどの感情は、夜になぞらえて表現されることが多いように思います。
「寂しくて眠れない夜」とかJ-POPの歌詞にありそうだし(笑)。
でも、本当の意味で孤独を感じるのは夜よりもむしろ朝かもしれません
目覚めたときって、例えばケガや病気をしていても一瞬忘れていて、傷が痛んだりだるさを感じたりすることで、「ああそういえばケガをしていたな」とか、「あ、風邪ひいてたんだった」なんて気づくことがありませんか?
悲しい出来事や誰かの死も、「あれは夢ではなかった」「ああ、あの人はもういないんだ」と、朝が来るたびにまた新たに心を痛めなければならない。

夜と朝の比較は、冬と夏の関係にも置き換えられるような気がします。
寒さ厳しい冬よりも、すべてを明るく照らし出す開放的な夏こそ悲しみが強調されるような……。


この映画、劇的なことは特に起こらず、何かをきっかけにロレンスやゾエがサシャの死を乗り越えるというわけではありません。
それでもなお、やはり時間だけが持つ癒しの力ってあるのかなと感じるのが、さらに1年後のニューヨーク編。
この地に居を移して翻訳業に明け暮れるロレンスは、まだまだ本調子ではないけれど、仲間と楽しく過ごす日々もあるようです。
やたら陽気な友人が1人出てきますが、僕たちがアメリカ人に期待するイメージ通りで嬉しい(笑)。

悲しい歴史とアーティスティックな現代性が共存しているベルリン。華やかで観光的な一面と、一方で排他的な部分もあるパリ。そして、熱気と開放感にあふれるニューヨーク(※マツコ脳内イメージ)。
少しずつではあるものの自分を取り戻していくロレンスの変化と、3つの街の性格の違いがなんだかとてもリンクしているように感じられて良いのです。


愛する人の死、街の緑がまぶしい散歩道、そして夏。なんだか『アマンダと僕』を彷彿させるなと思っていたら、なんと同じ監督の作品でした。
どちらも喪失と再生がテーマではあるものの、こちらはもう少し肩の力を抜いて、それこそ夏の映像を楽しむくらいの気持ちで見てもよさそうです。マツコ的には『アマンダ~』から先に見るのがおすすめ。
『サマーフィーリング』の世界のどこかにも、アマンダやダヴィッドがいそうな気がして嬉しくなります。

ちなみにパリ編ではサシャとゾエの両親が住むフランスのアヌシー地方も出てくるのですが、夏のアヌシー湖畔の美しさと言ったら、しつこいですが本当にずるい(笑)。
ベルリン、パリ、ニューヨーク。3つの街はいずれも緑がまぶしく、日本の夏とは違う乾いた空気がどこか非現実的な印象を与えます。
それでいてなぜかノスタルジックな気分になるのは、夏という季節が持つ普遍的なイメージのせいかもしれません。
(可能なら)ビールでも片手に、リラックスした姿勢で見たい映画です。



「サマーフィーリング」 渋谷シアターイメージフォーラムほか全国公開中
©Nord-Ouest Films - Arte France Cinéma - Katuh Studio - Rhône-Alpes Cinéma
配給:ブロードウェイ



【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回7/19(金)は「シンク・オア・ スイム イチかバチか俺たちの夢」です。お楽しみに!

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