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オレンジページ☆デイリー

2019.5.17

【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.7】「僕たちは希望という名の列車に乗った」

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
この間ある古い映画を観に行ったのですが、途中で「あ、これ観たことある」と気づき、さらには内容をあまり覚えていなかったので普通に楽しめたという……。

先日元号が変わりましたが、30年前の小渕元総理(当時は内閣官房長官)の会見の様子もよくテレビで流れていましたね。「マツコは小さかったから覚えてないや」と言うと、若者ぶってる!と、話す相手によっては顰蹙を買うハメに。昔の話をするときは、こういうやり取りに気を遣いますよね(笑)。昭和生まれだから僕だってもう若者ではないよ……。

昭和→平成に変わった30年前、世界的に大きな出来事がもう1つありました。
ドイツ・ベルリンの壁崩壊。それこそ若い人の中には、ドイツが東西に分割統治されていたことを知らない人がいるかも?
今回紹介する『僕たちは希望という名の列車に乗った』は、そのベルリンの壁ができる少し前、1956年に東ドイツで起こった実話を基にしたストーリー。
政治に翻弄されながら希望を追い求めた、若者たちの青春映画です。


1956年、東ドイツの高校に通うクルトとテオは、列車に乗って西ベルリンを訪れます。2人はクルトのお祖父さんのお墓参りを済ませた後、映画館へ。
お金がないのか(?)裏口から忍び込み、同い年くらいの女の子たちにまぎれて劇場にこっそり入る2人の姿は、どこにでもいる男子高校生。青春映画の始まりを感じさせます。
東ドイツと聞くとほの暗いイメージを抱きがちですが、それはやがてこの国が西ドイツに統合される形でなくなる運命を知っているからに過ぎません。
ソ連が人工衛星の打ち上げに世界で初めて成功するなど、当時の共産圏には勢いがあったんですね。

さて、彼らが映画館で目にしたのは、ソ連の支配に対して蜂起するハンガリーの民衆を映し出すニュース映画でした。
後日、この動乱でじつに数百名の市民が命を落とし、サッカーのハンガリー代表チームの主将・プスカシュも命を落としたと知り愕然とする2人。
クルトはクラスメイトに呼びかけ、ハンガリー市民に対して2分間の黙祷を捧げます。この行為が、当時ソ連の支配下にあった東ドイツでは「社会主義国家への反逆」と見なされてしまうのです。
当局は1週間以内に首謀者を告げるよう生徒たちに命じ、「判明しない場合は、全員退学」と通告。彼らは選択を迫られます。
仲間を密告してエリートへの階段を上るのか、正義を貫き進学をあきらめ、労働者として生きていくのか……。


補足しますと、ハンガリーは第二次世界大戦においてドイツ側について戦ったため、敗戦後はドイツと同様に、スターリン主導のソ連影響下に置かれました。
1956年、市民の不満が最高潮に達し、大規模なデモに発展したことを受け、事態を重く見たソ連が介入・侵攻したのがハンガリー動乱です。



【正解はない。自分が選んだ答えが正解】

これは、60年以上前の事件を題材にしたヒューマンドラマ。歴史の知識がなくても大丈夫です。
権力に従うか、自分の正義を貫くのか。主人公2人の置かれる立場が対照的で、どちらの言い分も納得できるため、観ている側も一緒に正解を見出すために思い悩むのではないでしょうか。
市議会議員の父を持つクルトはエリート階層。対するテオは労働者階級の一家に育ち、その中で彼は初めて進学クラスに通っている、一族の誇りです。
親友である2人は、この事件で意見が分かれて対立することに。2人の父親は、国家側に立つ者と労働者階級という立場の違いがあるものの、「決して国に逆らってはならない」という考えで、何としてでも息子を守らねばという気持ちにはなんら変わりがありません。


ところでこの主役2人の組み合わせ、どことなく昔のトレンディドラマを思わせます。
正統派イケメンで理知的、みんなの信頼も厚いクルト(写真右)と、ちょっぴりひょうきんで粗雑、熱いハートの持ち主テオ(写真左)。さあ、あなたはどちら派? 
ここに、テオの彼女であるレナも絡んでくるから大変。ドリカム編成で、いよいよトレンディドラマ感が増してきます。
そして期待通り、三角関係に……!? 大人しい顔してなかなかやりますよこの娘は。
マツコのイメージでは、ドラえもんに出てくるしずかちゃんです。


社会主義、冷戦、政治的弾圧。現代の日本に住む僕たちとはあまりにも違う状況なので、「自分ならどうするだろう」と想像することはなかなか難しいです。
ただ、こういった「究極の選択」、何を得て、そのために何を犠牲にするのかを問われる場面は、どの時代を生きる人にも訪れる選択ではないでしょうか。
仲間を裏切らないことだけが正解ではないと思います。そうしてでも手に入れたいものがある人にとってはそれが正解なのでしょうから。
クルトとテオ以外のクラスメイトたちにも色々なキャラクターがいて、自分は関係ないと主張する者、2人の意見のどちらかにつく者、そのときどきで意見を変える者、様々です。
これはどんな組織でも一緒で、いずれかの登場人物に自分を重ねることが出来るのでは。


大人になる一歩手前の若者たちが、自分の人生をかけた選択に悩む姿はキラキラしていて、それだけで胸を打つものがあります。
『僕たちは希望という名の列車に乗った』このタイトルの意味するところを、ぜひ鑑賞して確かめてください。マツコ的には三角関係の行方も注目してほしいです。皆さんはクルト派? テオ派?



パンフレットも列車風に横開きで素敵です。


「僕たちは希望という名の列車に乗った
5月17日(金) Bunkamura ル・シネマ、 ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国公開

配給:アルバトロス・フィルム/クロックワークス
© Studiocanal GmbH Julia Terjung


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文・撮影(パンフレットのみ)/編集部・小松正和

次回5/24(金)は「誰もがそれを知っている」です。お楽しみに!

 

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