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オレンジページ☆デイリー

2019.4.12

【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.2】「ビューティフル・ボーイ」

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
先週末に見た映画がとても重い作品でまだ引きずってしまっていて、やや暗い気分で働いています(笑)。
映画ってハッピーエンドばかりではなく、救いのないものや、正解がない問いを投げかけてくるものもたくさんありますね。


©François Duhamel

【正解も間違いもない、だから家族はむずかしい】

今回紹介する「ビューティフル・ボーイ」も、「感動」のひと言では片づけられないストーリーでした。
個人的法則ですが、ビューティとかビューティフルという言葉がタイトルに入っている映画にはずれはないような。
主演は今をときめくティモシー・シャラメさん。昨年立て続けに大作に出演し、一気に人気者になりましたね。名前は知らなくても、顔を見たら「ああこの人」と思うかたが多いんじゃないでしょうか。
僕も出演作を見て素敵な俳優さんだなとは思っていましたが、「イケメンが普通にリア充の役をやっているなあ」と感じていたので、今回のようにどうしようもない役を演じている彼の方が何倍も魅力的でした。

この映画、実話なんです。
⦅8年という長い歳月をかけてドラッグ依存を克服し、現在はNetflixの人気ドラマの脚本家として活躍する人物と、彼を支え続けた家族の物語。(公式サイトより)⦆ アメリカのお話です。

僕、この映画を見るまで恥ずかしながら知らなかったのですが、アメリカでは「薬物に手を出した人間が悪い」のではなく、「薬物が蔓延する社会に問題がある」という考えが浸透しているのだとか。
そのため、厳しい刑罰を与えるのではなく、リハビリを施して社会に復帰できる手助けをするのが社会として正しいあり方というわけです。日本は即逮捕で終わりですから随分と違いますね。

主人公のニックは成績優秀でスポーツ万能な学生でしたが、ふとしたきっかけでドラッグにのめり込み、更生施設に入ります。多くのドラッグ常用者がそうであるように、薬の誘惑から逃れることがなかなかできません。施設を抜け出すわ、家族に対して嘘を重ねるわ、もちろん再び薬に手を出すわで、もうハチャメチャですが、これが現実なのですね。


ニックの父親であるデヴィッドが、カウンセラーのもとを訪れるところから映画は始まります。「私の息子はあらゆる薬に手を出した。息子に何が起こったのか、私に何ができるのか」と。ニックはすでに薬物依存症になっていて、彼がなぜそのような道に進んでしまったのかはここでは明かされません。
その後複数の登場人物が出てくるのですが、母親らしき人物が離れたところに住んでいたり、弟や妹とずいぶん年が離れていたり、彼の家庭環境が明らかにされていきます。
彼がドラッグに「つい」手を出した背景がだんだんと分かってくるんですね。

ストーリーは父親のデヴィッドがニックをなんとか立ち直らせようと奔走する姿を通して描かれます。
先ほど「主人公のニック」と書きましたが、ダブル主演というか、ある意味お父さんが主役かもしれません。
デヴィッドは何度もニックに裏切られ、それでも息子の更生を信じ、無償の愛をもって体当たりで向き合います。行方不明のニックを大雨の中捜したり、話し合いのすえ激高したり、良い更生施設を探すため全米中に電話をかけたり(うろ覚えですが、施設を利用する費用はひと月4万ドルだったような、すごいですね)、「信じて待つ」みたいな生やさしい話ではなく、文字どおり体を張って息子に尽くすんです。
不思議なんですけど、途中で入る父子のエピソードを交えつつ、このお父さんの献身的な姿を見ていくうちに、逆にだんだんとニックの気持ちが分かるような気になってきました。


タイトルの「ビューティフル・ボーイ」は、別にネタバレじゃないと思うので書いちゃいますが、ジョン・レノンが息子に贈った曲だそうですね。映画では回想シーンのひとつとして、デヴィッドが幼いニックにこの曲を子守唄として歌う場面があります。これは、デヴィッドの記憶の中の映像。きっと彼にとってニックは、いつまでも汚れのないビューティフル・ボーイなんでしょうね。とても美しく、同時にとても残酷なシーンだと思います。
成績優秀で6つの大学に合格、文才があって水球も得意だったというニック。デヴィッドはこの時代がどうしても忘れられないんですね。
良い息子・良い兄でありつづけたニックが求めていたのは、過去を取り戻すことではなく、自慢できるものが何もない、何者でもない、そんな自分でも愛してくれることだったのでは。デヴィッドの愛情は本物だし、ニックもそれを痛いほど分かっているのですが……。

僕は小学生の頃は学級委員をやるような子どもで、ニックじゃないですがいわゆる良い子の典型だったんです。でも子どもって変わるじゃないですか。ただ、デヴィッドのように親って良いところでイメージが止まっているから、成長過程で親の期待にことごとく背いているなあと感じたのを覚えています。だってうちの両親、なぜか僕が国家公務員になると思ってたんですよ、それも根拠なく(笑)。
ニックに共感するところもあり、デヴィッドの献身的な姿に胸が痛みもし、心が忙しいまま観賞し終えました。



良い場面だなあと思ったのが、映画の後半、年の離れた弟に「久々に会って、違う?」とニックが聞くところ。弟は「最初は変な感じがしたけど、やっぱりニックだ」って言うんです。この言葉こそ、彼が欲しかったものなんじゃないかなあ。

クライマックス直前、物語を動かすのは意外な人物。そして過剰摂取で病院に運ばれたニックに対して、デヴィッドが下した決断とは。息子を愛するからこその決断に、胸を締めつけられながら映画は終わります。
薬物の問題がもちろんテーマではありますが、これは誰にとっても関わりのある家族の物語。傷つけ合い、愛情を不器用にぶつけ合う彼らの姿に心が痛みますが、最後に希望もそっと残してくれる映画です。


糖分の過剰摂取が僕の問題です。


「ビューティフル・ボーイ」4/12(金)~TOHO日比谷シャンテ他にて全国順次公開
配給:ファントム・フィルム
提供:ファントム・フィルム、カルチュア・パブリッシャーズ、朝日新聞社
© 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

文・撮影(お菓子のみ)/編集部・小松正和

次回4/19(金)は「幸福なラザロ」です。お楽しみに!

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