入社25年(つまり四半世紀)以上のベテラン料理編集者4人が「うちごはん」について気ままに、赤裸々に語るリレー連載。個人的好み全開のオリジナルレシピのおまけつき。
あれは高校受験を間近に控えた冬のある日。モンモンと受験勉強に励むふりをして、ラジオを聴き込んでいた私の部屋に突然父が現れて一言。
「ラーメン、食べに行くか」
こんな夜更けにラーメン・・・・・・。お店に心当たりがないながらも、ラーメンを食べたいという欲望にうち勝つことができず、渋々を装いつつ、じつはウキウキと出かけた娘。街灯の光もまばらな暗い夜道をしばらく歩いて、たどりついたのは軽トラックの荷台を改造した「屋台」仕様のラーメン屋。
父はビールを飲みながら、私は店主の手元を見つめながらラーメンができ上がるのを待つ・・・・・・。他にお客がいたかどうかは思い出せないけれど、父と肩寄せ合って過ごした不思議な時間と、煮干しのだしがきいたすっきりとした味わいのラーメンのうまさは「私もビール飲みたいな〜」と思ったこともセットで、今は亡き父との大事な思い出の一つです。
じつは今回紹介する「鶏手羽中のこしょうまみれ焼き」は、父と訪れた思い出のラーメン屋の手羽先焼きがモデル。企業秘密の何かをまぶして、オーブンでじっくり焼き上げる手羽先のうまさが忘れられず、なんとかうちで再現できないものかと、いろいろ試してみた結果、塩とこしょうだけでシンプルに仕上げる今のスタイルにたどりつきました。
トラックから小型のプレハブに、さらに大型のプレハブにと店舗を拡大したお店は残念ながらすでに閉店。父との思い出の味をお店で楽しむことはできないけれど、今はもう一人(旦那のこと)と、大好きなプロレスを観ながら「こしょうまみれ焼き」をつまむ時間が私の癒し。堂々とビールを飲める大人になったことにも無上の喜びを感じながら、おおむね飲みすぎております(笑)。
こしょうまみれ焼きには野菜を添えるのが常で、今回は旬の柿と水菜のサラダをたっぷりと。かるく塩をした水菜と、みりんをからめた柿を酢、オリーブオイル、こしょうであえれば完成。簡単で美味。
こしょうは粗びき黒こしょうとかではなく、いわゆる、おなじみの瓶入りの卓上コショーでないと、目指す味に仕上がりません。いつでもこしょうにまみれられるように、詰め替え用の袋入りを常備してるほどに必須(笑)。
オレぺのレシピを世に送り出しつづけているベテラン料理編集者4人が、これまで出会ったレシピの中から好きなもの、忘れられないものを自ら作って、撮って、語ります。
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