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馬田草織の塾前じゃないごはん
塾前じゃないごはん=お夕飯のこと。ポルトガル料理研究家で文筆家の母・馬田草織さんとJKこと女子高校生の娘さん。女2人で囲む気ままな食卓の風景をお届けします。さて今晩の「塾前じゃないごはん」は?

ずっとお金が苦手だった。そんなとき、山崎さんに出会った。『ねぎとハムのグラタン』のレシピ

2024.02.13

「ねぎとハムのグラタン」のレシピ

[第22回]ずっとお金が苦手だった。そんなとき、山崎さんに出会った。

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「ね、投資とかしてる? NISAとか」。
昨年の後半あたりから、友人と飲みに行くと投資の話題がちょこちょこ上るようになった。これまで女友達とそういう話になったことがなかったので驚くとともに、お金について気軽に話せる空気に変わっていることがうれしかった。そう、投資は大事だよ。そう思っていたからだ。それに、お金の話はその人の素に近い部分が見えて、おもしろくもある。

YouTubeやSNSなどをざっと眺めても、昨年後半から投資やお金に関するコンテンツはものすごい数があふれ、とくに2024年スタートの新NISAに関する分析がいまも盛んだ。こんな低金利で先行き不透明すぎる時代(いつの世もそう言われているが)、自分のお金をどうすべきか迷っている人は、わたしを含め山のようにいるはずだ。

生きるなら、切っても切れないお金の話

大人ならだれしも、お金と無縁で暮らすことはできない。わたしの場合、会社員だった30代半ばまでは目の前の仕事に必死で、お金に興味を持つ余裕がなかった。それが、会社を辞めてフリーランスになり、自分で確定申告を始めると、税金のことや保険、経費、年収など、毎年正面からシビアに向き合うようになった。さらに結婚し、出産し、離婚しと生活環境が怒涛の変化を遂げ、一人で子どもを育てていくと決めたとき、なにより心配だったのはお金だった。

産休を経て仕事に復帰した2010年当時、リーマンショック後の出版業界はすでに急激な下り坂を下りはじめていた。実際、電通が発表している日本の広告費の媒体別データを見ても、雑誌広告費がインターネット広告費に抜かれたのは2009年。これではたとえどんなに売れっ子の編集者やライターでも、今後20年間フリーランスで安定した収入を保てるとはとても思えない。どうすればいいんだろう。いろんな人に話を聞いていくうちに、仕事の方向性とは別に、手もとのお金を投資している人の存在に気がついた。「投資は、人生の心強い味方になってくれる」と話す人もいた。それならわたしも始めてみようかな。そう思った。

とはいえ、当時は投資の知識など皆無の状態。いくら話を聞いてもなかなか理解できず、最初は初心者にありがちないかにもな失敗もした。勉強不足なうえに、どこか他人まかせだったのが失敗の最大の理由。頑張って得た自分のお金なんだから、自分で調べて納得したところに投資しないと、失ったときのダメージが計り知れない。まずはそんな基本的なことを身をもって学んだ。そしてもっと地に足のついた、自分に合った投資の方法はないものかと探っていたら、経済評論家の山崎元さんに出会った。

経済評論家・山崎元さん

山崎さんは仕事で取材したわけでも、個人的なご縁があったわけでもない。私が一方的に、山崎さんを自分にとってのお金の先生と考えていたのだ。山崎さんの本を読むと、自分の失敗の原因や、なぜそうなったかという部分にとても納得がいったのだ。その後も山崎さんの言動に注目し、たくさん学ばせてもらった。画面や文字を介して知る山崎さんは、知識も経験も豊富なのに決して偉ぶらず、発言も具体的で率直、毒もありつつユーモアも失わない。その仕事ぶりがかっこいいなと思っていた。

昨年の暮れに、久しぶりに山崎さんが出ているYouTubeの番組を見た。食道がんを患い闘病中だと自ら話されていたが、そんな自分をも冷静に分析しつつ、いま見ている人に有益な情報を発信する姿が、ブレることなくとてもかっこよかった。どうか病を克服されますようにと願ってやまなかった。だから正月明けに山崎さんが亡くなったと知って、とても悲しかった。謹んでご冥福をお祈りします。


投資を勉強するということは、必然的に経済に興味を持つことになる。つまり、世の中の動きに興味を持つきっかけになる。いつも自分の興味が食や旅まわりとポルトガル関連と子育て界隈ばかりに向きがちな私には、投資の世界は知らないことばかりでおもしろい。でも、投資を始めていちばん強く感じているのはそういう大局的なことではなく、もっと根本的なことだ。つまり、この世にはうまい話もラクな稼ぎ方もないし、人は自ら失敗して悔しい思いをすることで真剣に学ぼうとする、ということだ。

なんだそんなの、投資なんかしなくても知ってるよ、と言われてしまうレベルの話。でも、実際に経験して実感したことは、見聞きするだけとは違って自分に刻まれる。そして、投資を通して経済や世の中の動きを知ろうとすることは、生きていくうえで決して無駄にはならない。資本主義の世界に生きているかぎり、投資を学ぶことは自分を守ることになるといっても過言ではない、と思うのだ。

今回の塾前じゃないごはん

「ねぎとハムのグラタン」

いま食べるべきは、ねぎ。年じゅう売っているけれど、いま出回っているものこそ旬を迎えて甘さや柔らかさが格別です。ねぎは、鍋や薬味など和のイメージが強いけれど、たとえば水とバターで静かに煮るだけでとろりと柔らかく上品な甘さとうまみが引き出され、見事に主役になります。ねぎのだしであっという間にできるホワイトソースといっしょにグラタンにすれば、酒を呼びつつご飯にも合うメインの一皿に。さっぱりした甘みがとても食べやすく、うちのJC娘の冬の好物でもあります。ボリュームが欲しければ、ハムの代わりに鶏肉や豚肉も相性よし。どちらもさっとゆでて加えると、やさしい食感のグラタンになります。

ねぎは長さ4〜5cmに切る。ハム3枚は細かく刻む。小鍋にねぎと水1カップくらいを入れ、塩をひとつまみ加えてふたをし、強火にかける。沸いたら弱火にし、ねぎが柔らかくなり透明感が出るまで煮る。煮えたらいったん、だしごと取り出す。あいた小鍋にバター大さじ1を入れて弱火で温め、溶けたら小麦粉大さじ1を加えて粉っぽいダマが消えるまで練る。なめらかになったら牛乳1/2カップとねぎのだしを戻し入れる。最初は少し、徐々に増やす。

加えるときは、鍋をいったん火からはずすと、あせらずにゆっくりできる。だまが不安な人は泡立て器で混ぜる。全体が混ざったらローリエを折って入れ、さらに弱火で2〜3分、ふつふつするまで混ぜながら温め、最後に塩で味をととのえる。あとでハムも入るので、塩は控えめのほうがバランスがいい。

ホワイトソースが完成したら仕上げ。耐熱皿にねぎを敷きつめ(写真のように上に飾る場合はその分をとっておく)、粗びき黒こしょうをふる。黒こしょうの辛みがねぎの甘みやうまみを引き立てるので多め推奨。さらに刻んだハムを散らしてホワイトソースをかけ、ピザ用チーズをふり、オーブンやトースターでこんがり焼いたら完成。なんといってもあつあつが最高なので、ビールやワインの準備は抜かりなく。
馬田草織
馬田草織
文筆家・編集者・ポルトガル料理研究家。思春期真っ盛りの女子中学生と2人暮らし。最新刊「ムイトボン! ポルトガルを食べる旅」(産業編集センター)。料理とワインを気軽に楽しむ会「ポルトガル食堂」を主宰。開催日などはインスタグラムからどうぞ。
インスタグラム @badasaori

『馬田草織の塾前じゃないごはん』 毎月第2・第4火曜更新・過去の連載はこちら>>>

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