食品添加物のフシギを研究 〈酸っぱい〉は地球を救う⁉ 夏休み科学教室

さまざまな食品に含まれる「食品添加物」。よく耳にするけれど、実際どんなものなの? そんな食品添加物について学ぶ、親子向けの科学教室が8月28日、オレンジページの体験型スタジオ「コトラボ」で開催されました。今回は、食品添加物のなかでも「酸味料」にクローズアップ。試食や実験を通して、楽しく学習したイベントの模様をお届けします!

私たち「スッパ隊」がレクチャーします!
授業の講師は、食品添加物の製造メーカー・扶桑化学工業の社員で結成された「スッパ隊」のメンバー。じつは扶桑化学工業は、酸味料の一種である「リンゴ酸」を製造する国内唯一の会社でもあるのです。その会社のシンボルマーク、りんごを頭にのっけたスッパ博士を中心に、酸っぱ~い酸味料のフシギな力をわかりやすく伝えます。

酸っぱさにも違いがある!? 酸味料の味比べをしてみよう

科学教室には、小学生とその保護者15組が参加(2部制)。研究員さながら白衣を着た子どもたちは、まずはウェルカムドリンクの果汁100%のオレンジジュースを手に「かんぱ~い!」。その味についてきかれると、「甘い」のほかに「酸っぱい」という感想も。そう、オレンジをはじめとした果物や野菜など、食品には「酸っぱい」と感じるものがたくさんありますよね。この性質を食品添加物に活用したのが、「酸味料」と呼ばれるものなんです。酸味料とひと口にいっても何種類もあり、その酸っぱさにも違いが。実際どんな味がするのか、「リンゴ酸」「グルコン酸」「酒石酸」の3種類の酸味料がそれぞれ入った砂糖水を飲んで、味を比べてみましょう!

リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、それぞれどんな味がするかな?

味比べを終えると、子どもたちはワークシートに感想を記入。スッパ博士によると「このなかでいちばん酸っぱいのは酒石酸。ただし、そう感じる時間は短いので、キレのいい酸っぱさ。ぶどうに多く含まれる酸です。次に酸っぱいのが、その名のとおり、りんごに多く含まれるリンゴ酸です。酒石酸とは反対に酸っぱさを長く感じるのが特徴。グルコン酸ははちみつにも多く含まれる酸で、酸っぱさレベルは低くおだやかな酸味です」。
なるほど ポイント

酸味料には味のバランスを整えたり、
食欲を増進する効果も!

さまざまな酸っぱさレベルのある酸味料。これを食品に上手に加えると、酸味が出ておいしくなるんです。それから、食品の味のバランスを整える働きも。たとえば、甘いものに少し酸味を加えると、味がしまってさらにおいしく感じますよね。また、酸っぱさを感じると食欲がわいたり、食べ物の消化吸収を助ける働きもあるんです。

色が鮮やかに変化する! 紫キャベツのゆで汁実験

さて、ここで実験です。酸味料のような酸っぱいものは、一般的に「酸性」という性質があり、その度合いを色で確認することもできるんです。それを検証するために、食品の性質に反応して色が変わる「アントシアニン」という成分を含む紫キャベツのゆで汁を使って、その変化を見ていきましょう。紫色の液体に、酸味料の一種であるリンゴ酸を入れると……あらフシギ! 一瞬で鮮やかな赤に。子どもたちから驚きの声が上がります。次に酢を入れるとピンクがかった赤、炭酸水を入れると赤紫に。マジックのように色が変わる様子に、みんな興味津々です。

赤から緑へ。7色のグラデーションに

さらに実験は続きます。水を加えると……変化はなし。にがり(海水に含まれる成分)を入れると青みがかった紫、卵の殻を入れると緑がかった青、糸こんにゃくを入れると緑色へと変化し、きれいなグラデーションになりました。

なるほど ポイント

色の変化は酸性、アルカリ性、中性と
食品の性質が異なるから

酸っぱさの素が多いと、液体は酸性になり、赤くなります。反対に、酸っぱさの素が少ないと「アルカリ性」という性質になり、液体が緑色になります。ちなみに水のような真ん中の性質のものは「中性」と呼ばれます。この酸っぱさの素の量は「pH(ピーエイチ)」といって、食品添加物でよく見る「pH調整剤」というのは、この量を調整する働きがあるんです。
※水素イオン

pH調整剤入りの鶏のから揚げを試食

では実際に、pH調整剤はどのように食品に役立つのでしょう? ここで登場したのが、pH調整剤を加えた鶏のから揚げ。使用しているのは胸肉です。脂肪が少ない胸肉は、加熱して調理すると身がパサついたり、堅くなってしまうイメージがありますが……。さあ、みんなで食べてみましょう。

パサつきなし!鶏胸肉がしっとりした味わいに

試食をした保護者からは「柔らかい」「しっとりジューシー」「さめているのにかみ切りやすい」という感想が。子どもたちもあっという間に完食です。

なるほど ポイント

pH調整剤で肉をアルカリ性にして、
ジューシーで柔らかく

肉は通常、焼くと繊維がぎゅっと固まってしまい、肉汁が外に流れ出てしまいます。しかしpH調整剤を使ってアルカリ性にすることで、肉の繊維が広がって、肉汁を閉じこめてくれるのです。ジューシーで柔らかくなるので、子どもやお年寄りも食べやすくなりますよ。酸味料もpH調整剤の一種で、食品に加えると、逆に酸性に傾きます。

酸味料を自分で配合してマイグミ作りに挑戦!

次に、グミの「まぶし粉」を自由に配合して自分好みの味に仕上げるマイグミ作りを体験。使う酸味料は、イベントの冒頭で味比べしたリンゴ酸、グルコン酸、酒石酸に、クエン酸を加えた4種。このなかから少量ずつ自由に組み合わせて、グラニュー糖と混ぜます。「うわ、酸っぱい!」などワイワイと味見しながら、子どもたちもハイテンション。味が決まったら、ポリ袋の中でグミにまぶして完成です。袋をシャカシャカ振って作るのも楽しい。

組み合わせは自由自在!オリジナルの味を作ってみよう

全種類バランスよく配合する子や、好みの酸味料を多めに入れる子など、作り方もさまざま。グミはオレンジ味、パイナップル味の2種類が用意され、同じ配合のまぶし粉でも、もともとのグミの味によって変化する酸味の違いも楽しんでいました。

酸っぱいは地球を救う! 酸味料の働きはいっぱい

酸味料は、このように食品をおいしくする働き以外にも、じつは菌の増殖や変色を抑えたりと、日もちをよくする効果もあります。その結果、食品が捨てられてしまうフードロスを減らすことにも貢献しています。私たちが暮らす地球の限りある資源を無駄なく大切に使うためにも、「酸っぱい」はなくてはならない存在なんですね!酸味料の働き フードロスの削減に

スッパ隊バッジを授与。今日からみんなもスッパ隊に!

スッパ隊の指導のもと、酸味料のフシギな力を勉強した子どもたち。最後に修了のあかしとして、スッパ隊が所属する扶桑化学工業のりんごマークが目印の特製バッジが授与されました。これで、今日から彼らもスッパ隊の一員です。その記念に、『こどもオレンジページ』の編集長も加わって、集合写真をパチリ。みんなとびきりの笑顔で、授業を終えました!
参加者の声
参加者のみなさんからは「酸っぱいに種類があるのがおもしろかった」「食品添加物というとよくないものというイメージがあったけど、身近なものだとわかった」「酸味料にはいろいろな働きがあるとわかってよかった」といった感想が寄せられました。酸っぱいってすごいんだね。

扶桑化学工業株式会社

1952年創業の、大阪に本社を置く会社。リンゴ酸をはじめとした果実酸などを製造・販売している。詳しくはこちらへ!

協力/扶桑化学工業株式会社

撮影/髙杉 純 取材・文/中村 円

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