Vol.4
「いろいろな人がいて当たり前」。それが、『負け犬の遠吠え』で伝えたかったことなんです。
「どんなに美人で仕事ができても、30代以上・未婚・子ナシは『女の負け犬』なのです」

……あれは2003年のこと。こんな衝撃的なテーマを掲げた酒井さんの著書『負け犬の遠吠え』が、世を騒がせました。〈負け犬論争〉まで巻き起こりましたが、酒井さんが伝えたかったのは「勝ち負けなんて本当はどうでもいい」ということ。それに「〈負け犬〉はあなただけじゃないし、〈勝ち犬〉には『世の中にはいろいろな人がいるのだ』と理解してほしい」ということでした。あの『負け犬の遠吠え』現象を今、酒井さんはこう振り返ります。

「まず〈負け犬〉という名が刺激的だったから、話題になったのでしょうね。今は逆に、若い女性は専業主婦願望が強くて、わりと早く結婚するでしょう? 年上の〈負け犬〉の実態を知って『ああはなりたくない』と感じたのかもしれませんね。だとしたら、いい影響を与えたのかな。それはつまり、〈負け犬〉が〈人柱〉になったということですが(笑)」

とはいえ、たくましい〈負け犬〉はむざむざ人柱には終わりません! 実際、酒井さんの周囲でも、編集者をはじめ40代の女性たちが、少しずつ結婚しはじめているといいます。

「30代のときはなんとなく『どうしよう?』と思っていただけの人たちが、40代近くなるとハタ! と本気で気づくみたいですね。私も30代ではあまりわかっていませんでした(笑)。ちゃんと努力した結果、結婚した人たちのことは『エライ!』と思っています」
ただし、「人はだれにも欠落した部分があるし、世の中には多様な人がいていい」という思いは、酒井さんにとって今も同じ。

「男女問わず、ごく普通に結婚する人、一生結婚しない人、結婚という形をとらずにパートナーとともに生きる人……。世の中にはいろいろな人がいて当たり前という意識が広がれば、だれもが生きやすくなるのでは。それを伝えられたなら、『負け犬の遠吠え』は意味があったと思います」
酒井さんの新たな魅力を開いた挑戦的な新境地、
『金閣寺の燃やし方』。


酒井さんは昨年秋、最新刊『金閣寺の燃やし方』を発表しました。こちらもまた、衝撃的なタイトルです。昭和25年、若い修行僧の放火により、京都の金閣寺は炎上しました。この事件への興味を、それぞれ『金閣寺』と、『五番町夕霧楼』『金閣炎上』という小説に仕上げた、三島由紀夫と水上勉。この二人の作家について探り、迫った作品で、酒井さんの挑戦的な新境地ともいえる一冊です。

「三島と水上は金閣寺炎上という事件に対して、それぞれまったく違うアプローチをした作家。その二人の比較対象をした本です。三島は東京生まれで東京育ち、一方、水上は若狭の生まれ。つまり表日本と裏日本です。また三島の心がつねに見つめていたのは広大な〈荒野〉であり、水上の原風景といえば母親が働いていた水はけの悪い〈汁田〉。そんな正反対の二人の作家のルーツを訪ねる紀行的な比較の側面もある一冊です。三島、水上の作品とあわせて、ぜひ読んでみてください」

さて残念ながら、「十人十色」酒井さんの巻もそろそろおしまい。最後に酒井さんから、みなさんへメッセージをいただきましょう。

「仕事をしていても専業主婦であっても、疲れたら休む、ムリをしない。それが大事だと思います。やっぱり健康第一ですから。このウェブサイトをチェックしたり、『オレンジページ』を読んだりしている人は、ちゃんと料理をしている人でしょう。日々、おいしいものをきちんと食べるということは、幸せな生活の基本ではないかと思うので、無理をしないで日常の幸せを味わってほしいと思います」

最新刊の『金閣寺の燃やし方』1680円(講談社)は、三島由紀夫と水上勉という二人の作家に深く鋭く迫った、酒井さんの挑戦的な文芸評論。
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